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暗闇の中の一等星

第3章 母親の記憶―紗希の過去―

 紗希はふと五年ほど前のことを思い出す――。


 周りには仲のいい親子と言われていて、紗希自身もそう思っていた。


 なのにくだらないことで母と口喧嘩をした。今では内容を思い出すこともできない。ただ、

「もう知らない! 出てく」


 紗希はそう吐き捨てると家を飛び出した。


 町内をあてもなくブラブラ歩く。そんなことを続けていくうちに、私は何をしているのだろう? と頭が冷えていき、帰宅した。


 帰宅すると母は居なくて。焦った紗希は母に電話をかける。

「お母さん!」

「紗希! 帰ったの?」


 紗希からの電話に母は思いの他、驚いている。


「帰ったよ。お母さん、何してるの?」


「紗希のこと探してた」


「ごめんねっ! 怒ってる?」


「もう怒ってないわよ。今から帰るわね」


 母はそう言って電話を切る。紗希は母が帰るまでそわそわしていた。


 数分後くらいに母は帰宅する。紗希は母の足音が聞こえると一目散に近づいた。


「お母さんっ! 本当にごめんなさい」


 紗希は涙をポロポロと流す。

「もういいのよ。紗希が無事だったんだから。おいしいものでも食べに行きましょう」


 母は優しく紗希の頭を撫でる。
「うん」


 紗希は涙を拭くと母の横につく、二人は近くのファミレスに向かった。


 紗希と母は他愛もない話をたくさんする。


 食べ終わり、帰宅してからは一緒にお風呂に入った。さっきまでの喧嘩は嘘みたいで、そこには笑顔が溢れている。


 一通りのことが終わると二人は眠りにつく。

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