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暗闇の中の一等星

第4章 暗闇の中の一等星―真治の過去―

 月日が流れたある日、真治の家に一通の包みと手紙が届いた。真治は手紙から読む。

“真治さんへ

 結局、お通夜にもお葬式にも顔を出してくれませんでしたね。美咲も寂しがっていたことと思います。ですが、真治さんの気持ちも分かりますよ。来てしまったら認めてしまうことになる。気持ちの整理がつかない。そんなところでしょうか。

 あれから、家の中にはぽっかり穴が開いてしまったようで、旦那と私、二人で寄り添って暮しています。

 何度も何度も美咲の携帯への着信。ありがとう。真治さんが美咲のことが大好きだって気持ちがよく分かりました。

 先日、お話できなかったことです。ここから先は、無理に読まなくてもいいですよ。

 美咲は、あの日……亡くなりました。自ら命を絶ってしまったのです。私が買い物から家に帰ると、お風呂場から水が溢れる音が聞こえ、見に行きました。そこには、床に転がった包丁があり、手首を浴槽につけ、水は真っ赤に染まっていました。美咲は目を閉じて座り込んでおり、まるで眠っているような顔をしています。頭が真っ白になり、パニックになりそうなのを必死で抑え、救急車と警察を呼びました。

 でも、既に遅かったのです。美咲は亡くなっていました。それから警察の人の調査です。侵入者の形跡も荒らされた痕跡もなく、美咲の日記帳もあり、自殺だと判断されました。

 私だって信じたくなかったです。でも目の前にある事実を受け入れるしかなかった。

 あの時の電話では、優しく言ったけれど、本当は真治さんのこと責めていましたよ。真治さんさえいなければ美咲は……と。でもやはり、美咲の日記帳を読むと幸せだったということも分かり、真治さんを愛しているんだということも。だから憎めなかった。
 真治さんが美咲を愛していることもこの何ヶ月の着信で痛いほどに伝わってきました。だから私は、真治さんを許します。だってきっと真治さんもとても苦しんだことと思いますから。

 美咲の日記帳、真治さんに差し上げます。では、寒い日が続きますがお体には気をつけて下さい。


”美咲の母より“

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