
好きになったらダメだよ
第6章 最低同士だからいいんじゃない?
月曜日の朝の数学準備室にはいつものように伊都の姿があった。
課題はもうないけど、それでも毎朝、彼はここに通ってくる。
担任がこの間冗談交じりにつぶやいていた。
最近、川田が遅刻しなくなったと。
どこかで変な物でも食べたんじゃないかと。
去年までの伊都はクラスでも3本の指には入る遅刻魔だったらしい。
「毎朝、澤田に会うために早起きしてるもんねー。」
と耳元で囁く橘には、一発鳩尾を殴っておいた。
「愛莉?」
ギュウって伊都の手が私を抱きすくめる。
体温が重なって、私は安心感を覚えるけど、でもダメなの。
だってこれじゃあ伊都がいるから保と別れたってことになる。
それは結局自分に逃げる居場所があったから、別れることができたってこと。
そう、ただ自分が可愛いだけ。
保と別れるときに、もう一つ決めていたことがある。
夏美の言葉が耳に残っている。
