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好きになったらダメだよ

第6章 最低同士だからいいんじゃない?



「……伊都、離して。」


いつもより強く突き放す口調に、伊都の手が緩んで、その隙に私は彼から離れた。


「全部なかったことにして欲しいの。」


「えっ……?」


「やっぱりこんな危ない橋を渡るのは、私には向いてない。だからもう終わりにしたいの。」



「それ本気?」



伊都が手を伸ばして触れようとしたから、私は交わすように彼の手の届かない範囲まで距離をとる。


「本気よ。だから出て行って。迷惑。」


「……。」


「早く!!」


最後は金切声に近かった。


一瞬、伊都は何か言いたげに口を開いたけど、言葉を発することはなく、背を向けて部屋を出て行った。


彼の後ろ姿に思わず目を伏せた。


いつの間にか自分の中に伊都の存在が大きくなっていたのは確かだ。


一緒に行った海も今も鮮明に目の奥に焼き付いている。


でも、保と別れて、自分だけ傷付かないなんてのは、勝手がよ過ぎる。

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