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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚







『……の判断に任せる…』

『ダメだと思うなら遠慮なく切り捨てろ………あぁ、構わない。…ヤれ』

「…ん………」


それからどれくらい時間がたったのかはわからない。どうやらそのまましばらくの間、眠っていたようだ。それを裏付けるように、傍らから聞こえる誰かの声で意識が浮上した。


『……責任!? フン…今更何を言い出すかと思えば…。お前はなんのためにオレがいると思ってる』


あ…

さらりとそんなことを言い放ち、電話を片手に長い脚を組み、口角を斜め上に微笑む渚くんの姿が次第にクリアになる視界に飛び込んでくる。

大きな窓から差し込んだ希薄な空の高い日差しが、彼の閉じられた瞼の上に長い睫毛の影を落としている。その風景がただでさえ美しい彼の面立ちを、より一層美しいものに際立たせていた。


『要らぬことに気を回すな…』


仕事の電話だ…

話を続けるその姿をぼんやり見つめながら、ふとアタシは改めて”紫堂渚”という人物のことを想う。

今や世界に名を轟かす巨大企業グループのトップをこの若さで引き継ぎ、創業者である父親以上の才覚で事業をより大きく確固なものにしていると言われる財界の貴公子。


"責任"…


「………」


そんな彼は…

声にすれば軽い、たった僅かなその響きに、どれだけのものを背負っているのだろうか…

その背中にどれだけの重き荷を…


そんなことアタシが考えたところで、きっとそのキャパシティーは想像を遥かに超えているに違いないけれど…





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