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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚







そんなアタシの顔を覗き込んだ渚くん。


…‼

即座に目が合えば待ったなし。反射的に心臓が飛び跳ねる。



──眠る前のことが、思い出せない………


…なんていうのはまったくの嘘で。


自分がしたことも、されたことも

ちゃんと全部、覚えてて………


「っ─────‼」


彼の顔を見て、瞬く間に顔が熱くなるのを感じる。

思わずバッと顔を背けた先の視線に映った、サイドボードに置かれたマグカップ…

結果オーライ、せめてもの回避行為はまるで意味がない。


完全に熱に浮かされた。


アタシ…

アタシ…ッ…

なんてことを……!!!

恥ずかしいにも程がある。

おバカさんにも程がある!!


赤裸々に思い浮かぶ自分のあられもない羞恥に耐えかねて、ぎゅっと瞼を固く閉じる。

ここはベッドの上。動かないカラダ。穴があったら入りたい状況で逃げ場なし。


…が、そこに突如舞い降りる、優しい優しい感触…


え…!?


「……千隼」


…‼


「目、開けて…」

「…」

「顔、ちゃんと見せろ…」

「…っ」


アタシのいたるところに落とされる甘い声色を奏でる唇に…

そして頬を壊れ物のようにそっと撫でる指先の感覚に誘われて、恐る恐るゆっくり瞼を押し上げる。

…するとそこには思ってもみなかった彼の、どこかホッとしたような表情で穏やかに微笑む渚くんの顔があった。


まるでなにも気にしていないというか、むしろなにもなかったかというような彼のいたって自然な振る舞いに、解かれていくアタシの暴走しかけた羞恥心。





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