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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚







―彼が傍にいてくれるから…


その大きな存在を、すがるように見あげると優しい瞳がそっと返事をしてくれた。


「さむ、い…」

「あぁ、言えるだけお前のこと教えて。その方が善処できる」

「ん…っ」


横になったまま体温計を当ててもらい、覚束ないながら自分の状況を彼に伝えてから、ものの十数秒…


「…その様子じゃまだあがりそうだな」


小さな電子音が知らせた数字とアタシを交互に見ながら渚くんが息を吐いた。

37.9℃…

彼のオフィスを出た時よりもだいぶ高い。しかも寒気が治まらないところをみると、ここからまだ熱があがる可能性は充分だ。


「不安だな…」


あ…

エスパー…


渚くんのお陰で安心だとはいえ、滅多に起こりえないことに対する一抹の不安は完全にはぬぐい切れないというのもまた事実…

コクリと素直に頷くと、着替えを施す彼にそっと抱き起こされる。


「いっそお前の不安もその熱も、全部取り除いてやれればいいのに…」


……っ…


静かな呟き落とした唇が額に触れて、優しく髪を撫でた手が壊れ物を包むようにアタシを抱く。


そんな優しい声でそんなおまじないされたら逆に熱があがっちゃうよ…


「……うん」


今日の渚くんはこの期に及んでとんでもないことを言ってくれるものだ。


…でも、いい。

いつもなら恥ずかしくて、顔も見れないまま一瞬で熔けてなくなってしまいそうだけど…


なんだか今日は、それが、丁度いい…。






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