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犬猿の仲良し

第23章 ちくちく

ー玄関

神楽は玄関で看板を取り付ける係をしていた。

璃「神楽ー」
神「璃玖じゃねぇか!何か用か?」

神楽は俺の姿を見つけると、ぱぁっと笑顔になった。
それを見て俺も何だか嬉しくなった。
さっきのイライラが取り払われたような気がした。

璃「何か手伝うか?」
神「今終わったとこでな。疲れたし屋上行かねぇか璃玖さんよ」
璃「他の準備はどーすんだ?」
神「ちっとぐれーサボっても大丈夫だろ!おら、行くぞ!」
璃「俺、ちょっとなんてもんじゃねぇんだけど」
神「ははっ(笑)そうだったな!まぁいいじゃねぇか!んーじゃ、移動すっかね」
璃「おう」

こいつといると元気が注ぎ込まれる。
健太を好きになるより神楽を好きになった方が幸せになれる気がする。
あいつ、乗り換えるとか言ってたしな。

ズキッ…

あぁもう。
痛い。

ー屋上

屋上の柵に2人して寄りかかった。

神「ふーっ。あっちぃー。秋なのによー」
璃「そうだ。聞きたいことっつーか…」
神「おう?何だ?」
璃「健太を見てたり健太のことを考えたりするとここら辺が急に痛くなるんだ」

俺は胸に手を当てて言った。
今は大丈夫だな。

神「そいつは嫉妬だろ」

ケロッと言い放つ神楽に俺は目を丸くした。
嫉妬…健太に?
そんな日が来るなんて思いもしなかった。
だとしたら俺は…。

神「健太が好きなんだろ?」
璃「…そうなのか?」
神「あぁ。それに返事、そろそろしてやんないといけねぇだろう?随分待たせてんじゃねぇか?」

俺はもしかしたら心のどこかで分かっていた。
ただ理解のある奴の後押しが欲しかったから。
神楽に助けを求めた。
助かりっぱなしだな、本当に。

神「つーか…原因はもう分かってて俺に聞いてきたんじゃねーのか?」
璃「え」

心を見透かされたのかと思った。
何でもお見通しですか。
敵わねぇ。

神「ったく皮肉なもんだぜ!なぁ?」
璃「わり…」
神「何で謝る?俺ぁ好きな奴は自分の手で幸せにしてやりたいってのと同じぐらい、好きな奴の幸せを願ってんだぜ!」
璃「神楽…」

裏のない純粋で心から笑った顔。
花火はきっと神楽のこういうところを好きになったんだ。
ごめん花火。
神楽の気持ちを足蹴にしている俺を許して欲しい。

神「しかしまぁ何で急に?いつからだ?」
璃「さっきだ。蒼依って奴と話してるところ見てたら…」

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