テキストサイズ

リモーネ

第5章 ペチュニア



かえでの指を形を確かめるように上へ下へと撫で上げるセナの様子に撫でられる側は気が気でない。

「…そ、んなに?」

「はい。俺、手がね、あんまりきれいじゃないんです」

「武骨で男らしくていいと思うけど?」

かえでは自分の指を撫でる指をみながら答える

「…俺は、かえでの手がいいんです。」

「!?」

「どうしたんですか」

「いや、あの、出るかと思った、その、精神的に?こころのやつから?えっと、うん。」

それになにが、と聞くほどセナは無粋ではないと思いたいところだが、そもそもなんの話かがわかっていないようで、スルーした

「俺は、母を早くになくしました」

その言葉をセナから聞いたかえでは指をピクリと震わせる

「…突然すみません。でも、今かなって。
俺の母は生まれつきなのか、あまり体が強くなかったらしいです。
でも、なんか色々とこう、すごく頑張ってそれに抗って、子供を3人、生みました。
兄と、姉と、俺です。
そこから何年かは元気だったんですけど、俺が小学校に入るかそこらで体調を崩してそのまま帰らぬ人になりました。
俺は母が大好きです。
その母の手はすごく白くて、きれいなんです。
この、かえでの手みたいに。
だから、好きなんです。」

なんとも美しい話だが、

「俺は、セナちゃんのお母さんの代わり?」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ