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リモーネ

第4章 ツルバラ

剣道場へ入ると神崎先輩以外の部員が揃っていて、全員道着に着替えていた。

「さー!今日はたぶんいっちゃん遅いから副部長!の俺が指揮しまーす。」

かえで先輩は俺の手を握りしめたまま、副部長と言うところを無駄に強調しつつ指揮をする宣言をして部室に入る。

因みに俺は着替えている途中だったため道着にジャージと言う奇妙な格好で道場裏に行っていた。

そしてかえで先輩はまだ制服だった。

かえで先輩に急かされつつ道着に着替えて道場へ入るとそこにはいつもと違う引き締まった雰囲気の道場があった。

何ごとかと思いかえで先輩を見ると、かえで先輩もまた引き締まった顔だった。

「整列っ!」

かえで先輩が真面目な声で指示を出す。

「はいっ!」

部員がそれに応える。

俺は心がざわめくのを感じた。


今日の練習はキツかった。死ぬかと思った。でも、凄くうきうきした。

部活後、俺は道場の鍵を返しながら今日の練習内容を頭の中で反芻した。


中でも、かえで先輩の剣道はやっぱり飛び抜けてかっこよかった。

そんな風に考え、一人にやつきながら自転車乗り場へと歩く。

俺の自転車のもとへ近づくと、そこには人影があった。

自転車通学なんて、珍しい。

と駅から近い学校の地理的条件を思いながら近づくと、その人影はかえで先輩だった。

「やぁセナちゃん。」

「かえで先輩は電車でしょう?」

「いやまぁそうなんだけど。
駅まで一緒にいこうよ。
というかセナちゃん今日電車だから自転車ないでしょ。」

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