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リモーネ

第4章 ツルバラ


部活の前にかえで先輩が教室に来て、事務室に強制連行された。


何事かと尋ねると、通学証明書。とだけいわれ、本当に俺、電車通になるんだと思った。


「いやぁー。これでセナちゃんも電車だねー☆」

「え、俺これわざわざ買いにいくんですか。


めんどくさい…。」



「もー!今日どうせ電車なんだから!」


「定期買えるほどのお金を日々持ってきているとお思いですか?」


「…。」


通学証明書を発行してもらって俺より上機嫌だったかえで先輩はそれきり黙ってしまった。



昨日から厳しい練習へと変貌した部活を終え、かえで先輩と共に帰路へつく。


「セナちゃん、定期、どうするの。」



かえで先輩は二人きりになるまで俺と会話せず、二人きりになったところでやっとかえで先輩が話しかけてきた。


「…明日の朝、早起きして買います」


俺はほぼ独り暮らしみたいなもので、俺は学生で収入はない。

父は滅多に帰ってこないが、正月の三ヶ日くらいは帰ってきていくらかの現金をおいていく。


だから俺はお金に困ってはいないし、父が置いていくのは俺が自由に使って良いお金だから誰にも相談は要らない。


そもそも置いていく分は姉と兄が俺くらいの時分に使ったお金だから、塾代も要らない俺には多すぎる。


「ほんとー!じゃあ、ちょっと早く行くね!ちゃんと起きてよ!」



家に帰って、風呂も上がって、ご飯も食べて、明日の準備をするときに、家の隠し部屋に入って金庫を開ける。


ネットで家の最寄りから学校の最寄りまでの半年分の定期の値段は調べたから、その分を出して、代わりに何に使うかを紙に書いて金庫を閉める。

自分の部屋に戻ってそのお金を財布につめ、眠りに落ちる。




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