
リモーネ
第4章 ツルバラ
あまりの明るさにふと気がついて時計を見ると8時半。
また朝が来た
今日はまだ着信音は鳴っていないけど、一昨日も昨日もアポなしで人の家に来た人たちだ。
どうせ今日も来る
そう考えた俺はベッドから起きてパジャマを脱ぎ、目についた服を着、朝御飯を食べる
歯を磨いたあとソファーに座ってぼんやりとしているとスマホの着信音が鳴った
そのままスマホを掴んで玄関の扉を開ける
「…お、はようございます…?」
「おはよう!セナちゃん!」
「なんで一人なんですか?」
「なんか、いっちゃんと凪くんが二人でデートするらしくって、俺暇だから」
…俺の家は溜まり場じゃないですが?
そう言いかけてやめた
「今日はなんのゲームですか?」
「今日はね、出かけるよ。」
「はい?」
そのあと、外に出たくないとごねる俺を家から引きずり出して駅まで連れていった
「どこにいくんですか?」
「街。」
学校にいくのと逆方向の電車に乗り、それ以降なにも話さなくなったかえで先輩が違う人に見えて面白くなくて、俺は意味もなく車内の広告を穴が開くほど見ていた
住宅地、田んぼと山、川、田んぼ、山、山、住宅地、海、住宅地、ビル、ビル、ビル…
まちにいくのならもっと早くつく電車もあるのに、普通電車から乗り換えずにぼんやりと窓の外を見るかえで先輩を人の少ない車両のすぐ隣に感じる。
大きな駅に近づいてくるとかえで先輩の隣にも人が来て長椅子の端に座っている俺のほうに少しだけ詰めてきて肩が触れた。
突然のことに驚いた俺が、少し体を揺らすとかえで先輩は俺の顔を覗き込んでふっと笑った
人が多かったので小声で何ですかというと、かえで先輩は笑ったまま何でもないよといってまた視線を漂わせた。
