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僕らはずっと…

第11章 好き

side:羽山 柊




「ただいまあ。」



誰もいない家に挨拶する。昔からそう。母さんがいた頃のように挨拶するのがいつの間にか癖になってた。




春も小さい声でただいまを言っている。

僕の左手の中にある春の手を離す。正直離しがたかったけど、もう家に着いてしまったんだから仕方ない。



すごく久しぶりに春と手をつないだ。柔らかくて小さくてかわいかった。



春が泣いてて。何で泣いてるのか分かんないけど心配で。小さくなってる春を見たら無意識に手を引いていた。



昔はよくそうやって帰った。学校の登下校。はぐれないように。迷子にならないようにって、手をつないで帰ったね。



いつから手をつながなくなった?いつから手をつなげなくなった?





そんな事考えたって仕方ないけどね。







俺と春は手を洗ってリビングに行く。



日当たりのいいリビングは夕日が差し込んでいて電気を付けなくても明るい。



ちょっと夕日を楽しみたいな。と思ってわざと電気をつけなかった。




「春、ミルクティーいれるから座ってて。」




「うん。」



春が小さくうなずきながら答える。茶色味がかった髪が夕日に照らされてキレイだ。



泣いたからだろう。目の端が少し赤くなってる。




春はミルクティーが好き。これを飲んで少しでも落ち着いてくれたらいいな。


そして、何でああなったのか話してくれたらさらにいいけど。





春が元気になればそれでいいか。






「おまたせ。」




春の前にある机に、2人分のティーセットとクッキーが乗った盆を置く。



春はテレビの前にあるソファに体操座りで座って待っていてくれた。




「どお?おいしい?」




「うん。おいしぃ。」




春が膝の上にティーカップを置きながら答える。

少し笑顔になっている。



家の近くのスーパーに新しく売ってあった紅茶を使ってみたのだ。気に入ってくれたようでこっちまで嬉しくなる。





「柊。優しいね。」




唐突に春がそんなことを言う。





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