今日も明日も
第14章 蜘蛛の糸
俺と相葉さんが付き合ってる事は皆が承知だったから
帰りだってわざと一緒に楽屋を出るようにしてた。
ただ今までと違うのは
…同じ部屋には帰らなくなった事。
「二人とも、すごく無理してる」
「え…」
大野さんが、悲しそうな顔をする。
「無理して、仲良いフリしてる」
「そんなこと…」
ないよ、って言おうとしたら
…勝手に涙が零れてきた。
何で泣いてんの、俺
だけど
それは自分の意に反して次々と溢れだしてくるから
大野さんに顔を見られたくなくて
俯いて誤魔化すしかできなかった。
「にの…」
それ以上は何も言わずに
大野さんが柔らかい手のひらを俺の頭に乗せた。
髪を撫でるその手が優しくて
余計に涙が止まらない。
「…ごめん、大野さん」
「いいよ。我慢すんな」
謝ってはいても
黙って泣かせてくれる大野さんに
もう少し甘えたい
…そう思ったけど
ガチャリ、と楽屋のドアが開く。
誰かが入って来た事に気付いて
慌てて目を擦って顔を上げたら…
「あ……」
一番こんなとこを見られたくない人の姿が目に飛び込んできた。
「…何してんの」
相葉さんが、低く呻くように言った。
その目は、射抜くように鋭い。
…固まってる俺の方にゆっくりと歩いてくる。
だけど、ある程度の距離からは
傍には来てくれなくて
立ち止まったまま、俺を見つめた。