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今日も明日も

第14章 蜘蛛の糸

エレベーターでも、部屋に続く廊下でも

相葉さんは一言も喋らない。

…見慣れた背中が、凄く遠く感じる。



なんでこんなになるまで動かなかったんだろう



笑いかけてよ。

抱き締めてよ。



…だけど

全ては自分のせい。


目尻に浮かんできた涙は

出なかったことにしたくて


手の甲で、思いきり擦り上げた。




部屋の鍵を開けて

相葉さんが

チラ、と振り返った。


だけど

すぐに視線を戻して中に進む。



「…おじゃま、します」

先に行ってしまった相葉さんを追うように

急いで靴を脱いだ。



リビングに続く扉を閉めないのは

いつもの相葉さんの

クセ。



付き合うようになって間もない頃に


『先に入って閉めちゃうのって締め出しみたいで嫌なんだよね』

そう言ってたっけ。


今、閉めないでいてくれるのは

まだ、大丈夫


…そう考えて、いい?


相葉さんは、買ってきたものをテーブルに広げている。


俺はただ

突っ立っているだけ。



「座りなよ」

相葉さんが、立ち尽くす俺に気付いて促した。

「あ…うん」

素直にそれに従って、カウンタースツールに腰を下ろす事にした。

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