今日も明日も
第18章 けんか
楽屋でそんな事を話してるなんて
知る由もない俺は
久しぶりの全力疾走で
前を走るにのを追い掛けた。
楽屋のある3階から
5階まで走って
トイレの入口で、ようやくにのの腕を掴まえた。
「つ…かま…えた…」
ゼエゼエと肩で息をするのが精一杯。
でも、にのも同じように
小刻みに肩を上下させている。
「なんで…追い掛けてくんのよ」
「お前が逃げるからだろ」
にのの腕を掴んだまま
しゃがみこんだら
にのも一緒にしゃがみこんだ。
二人で、しばらくの間
息を整えるのに必死になってたら
何だか笑えてきた。
「年食ったなぁ…」
思わず呟いたら
「…だね」
にのもクスクス笑いだした。
たったの2フロア分を走っただけで
動けなくなるなんて
「で、にの。何で怒ってんの」
これが追いかけっこの目的。
「本当に分かんないの?」
またにのがプイッとする。
「だって心当たりないもん」
そう言ったら
「あいばか!」
唇を尖らせた。
「風間くんが、アンタの事ばっか喋るから」
面白くないの!
にのの顔は、そっぽを向いていて良く見えない。
「そんな理由…?」
「そんなって言うな!あいばか!」