
今日も明日も
第23章 理由はいらない
「あ、い、いらっしゃいませ!」
口から出たのはマニュアル通りの台詞
二宮さんは
せっかく俺の事を覚えててくれたってのに
「確か…アイ、ダさんでしたっけ?」
挙動不審な俺を、気にする様子もなく
二宮さんは尚もニッコリしている
「あ、いえ…相葉です、アイバ」
胸のネームプレートを両手でグイッと出して、二宮さんに見せた
少しずつ、思考がまともになってきたのと
…潤が面白がって傍にいるのも手伝って
冷静を装う事が出来てきた
本当は、心臓が口から出そうなくらいバクバクしてるんだけどね
だけど
「ああ、アイバさんって言うんだ」
珍しい苗字ですね、なんて
気さくに会話を投げ掛けてくれたから
ますます俺の鼓動は激しさを増してきていて
何か言わなきゃ
何か話さなきゃ
と、考えれば考える程
言葉が何も浮かばなくなっていた
「…注文、いいですか?」
…会話にならない事を察したのか
二宮さんが、目を逸らした
