今日も明日も
第39章 再録・ ミニ短編
「花火やらない?」
やけにご機嫌なにのが、目の前に花火の袋をぶら下げている
「どしたの、それ?」
「貰ってきた」
いそいそとライターやらバケツを用意してるって事は "やらない?" じゃないでしょ
俺に選択権なんてないくせに
「ほら、行くよ!」
俺の手を引っ張って、楽屋から外に連れ出される
屋上に着いたら、あれよあれよと花火を持たされて、火をつけられて
お互い無言で、向きあってパチパチと彩る花火を見つめていた
「にの?どしたの?」
「なにが?」
「いきなり花火やろうとか…」
「別に…たださ、」
にのが、そう言うとほんのりと顔を赤らめた
「朝の占いでね、花火をすると素直になれる、って言ってたから」
「うん?」
「確かめてみようと思って」
にのの瞳が、俺を捉えた
「何を…確かめるの?」
俺も、その瞳から逸らさない
「…好きって気持ち」
"ほら、素直に言えたー" なんてちょっとおどけて見せてるにのが可愛い
そんなとこが、たまらなく愛しい
「…俺はにのの全部が好き」
いつの間にか終わっていた花火
自然に引き寄せられる顔と顔
素直になったキスは
煙の匂いがした
End