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今日も明日も

第9章 やきもち

弁当を食べて、アルコールの缶が3本目を数える頃

「そういえばさ、名前どうすんの?」

「ポチだよ?」

「は?」

「犬と言ったらポチでしょ!」

相葉さんのドヤ顔。
昭和か!

「にの、何か付けたい名前あるの?」

…一緒に考えたかった、なんて言いたくないから

「別に。相葉さんの犬だし好きにすれば?」

少し突き放すように返してしまった。

「俺の犬、じゃないよ」

相葉さんが、蕩けそうな顔で俺を見ると

「ポチは、俺とにのの子だよ?…だって2人で育てるんでしょ」

にーっこりと満面の笑み。

「ば…バカじゃないのっ!?」

ブワッと赤くなった顔を隠すように、俺は慌てて缶の中身を飲み干した。


俺の声に驚いてしまったのか、「ポチ」が起き上がってブルブルと全身を身震いさせるとトテトテと相葉さんの許へ近寄ってきた。

くぅーん、と高い声で鳴く。

「ポチ」

嬉しそうに相葉さんが抱き上げると、ポチがペロッとほっぺを舐めた。

「甘えてんの?もー可愛い!」

おでこをくっつけたり、頬ずりしたり。

あ…何か面白くない。

俺にしか見せないはずの蕩けた顔をポチに当たり前に見せている。

目の前に俺がいるのに、ポチばっか構って…!

可愛いけど可愛くない。
おまえを撫でてるそいつは俺のだぞ!


あれ?

俺何考えてんの?

これって…まさかやきもち焼いてる?

待て待て!相手は犬だぞ。それも捨てられてた子犬。

…うわっ

俺情けない…

「風呂入ってくる!」

その場から逃げたくて、ボストンバッグごと掴むと
バスルームに足早に向かった。

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