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今日も明日も

第49章 春が近いから


相葉さんの分の透明のパッケージも勝手に剥がして、椅子に座ると

相葉さんも、無言のまま向かい側に腰を降ろした

面と向かうと俺もこの後が浮かばない

台本がない難しさに内心焦っていた




「にの…何で?」
ふいに呟いた相葉さんの声があまりに弱々しくて
俺は弾かれたように顔を上げた

「え?」

さっきまでの、怖い勢いはどうしたんだよ
それこそ “帰れ“ とまで言ってたくせに


「だって俺…お前に酷い事……」

ああそうか
酔ってたのは、俺だけじゃない

相葉さんも一緒に飲んでたんだ
その酔いの方向が食い違ってしまってて

お互い醒めた今
…演じてる俺に戸惑ってる

って事は俺は演じられてる
相葉さんはそれに気付いてないんだから


わざと俺は頬杖をついて、微笑を浮かべた

あくまで “普段通り“ にする為に



ピー、とお湯が沸いたのを知らせる音がして
相葉さんの視線を断ち切った

そしてやかんを取ってきて
何も聞かずに2つともお湯を注いでやる

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