テキストサイズ

今日も明日も

第50章 単純同士の方程式


「怒ってんじゃねーか」
「だから怒ってないってば」

深夜にも関わらず車は多い

本当なら急ブレーキでも踏んで問い詰めたいけど、それはいくらなんでも危険すぎだし
かといって曲がるとこもない道では車の流れに合わせるしかなくて

そうなるとこの理由の分からない不穏な空気を変えようがない

100歩譲って、怒ってないと言うなら
その不機嫌な理由を示して欲しい

俺にだって、限界ってのは存在するんだ

運転にイライラを持ち込ませるなよ


…だけど相葉さんは口を開く事もなければ、こっちを見ようともしない

こんな事なら迎えになんか行かなければ良かった

ただ相葉さんが喜ぶかなと思っただけなのに

たまにはサービスしてやってもいいかな、なんて、柄にもない事しなきゃ良かった


無言の車内に、適当に付けたFMの軽快なトークが繰り広げられる

こんな気分の時に他人の楽しそうな声なんか聞きたくない

思わず舌打ちしてしまった俺に、相葉さんが微かに視線を向けた事を空気が教えてくれた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ