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今日も明日も

第11章 ひみつ

無言の車内は、ちょっと重い空気だった。

運転しながら、窺うようにチラチラこっちを気にしてるのは知ってるけど

あえて無視してた。


…本当はね

そこまで俺を求める相葉さんが、凄く愛しかったんだけど

それを言ってしまったら、あの人暴走しかねないでしょ

場所も考えずにそうなったら笑い話じゃ済まなくなるんだってば。

だから、俺は思いきり怒ったフリ。

俺だって、今日は一緒に過ごしたいんだから本気じゃないんだ。







「…着いたよ」

まだ落ち込んだままの相葉さんが、着いた、と車を止めたのは

いつもの駐車場じゃなくて

マンションの正面玄関。

なに?本気で諦めて帰るつもり?

もー…何でそこで素直に従っちゃうかなぁ

「車、止めないの?」

わざとぶっきらぼうに言う。

「え?」

「そのまま帰るなら構わないけど」

ぱぁっと嬉しそうに顔をあげる相葉さん。

「と…止める!止めます!」

慌ててギアを入れようとしたから

軽くその上に手を重ねて

「…先に行ってるからね」

わざと囁いてから

すぐにそれを離して、俺は車を降りた。


「すぐ行くからっ!」

完全に破顔した相葉さんをチラッと確認してから

動き出した車をそのままに
エントランスに向かう。

相葉さんを待つ事なく、さっさとエレベーターに乗り込んで部屋に向かった。

…照れくさくて、赤い顔を見られたくなかったから

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