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今日も明日も

第11章 ひみつ

冷えた室内に思わず体が震える。

玄関と廊下、リビングの灯りをつけてから
すぐにエアコンもONにする。

温かいものでも入れてやるか、とお湯を火にかけて
いつものお揃いのカップを取り出してから

キッチンに置いてある折り畳み椅子に座った。


「あれ?」

気付いたら
いい加減、もう来てもおかしくない位に時間が立っている。

駐車場に車を置いてからゆっくり歩いたって5分と掛からないのに。

とっくにお湯は沸いて、…カップに注いだココアの薫りが室内に広がっていった。


先に車を降りてから、10分、20分と時間だけが過ぎるけど

相葉さんが来る様子が一向にない。

耳を澄ませれば聞こえるエレベーターの音も、全くしない。


まさか帰っちゃったの?

でも、止めてくる!って喜んでたよね?

すぐ行くからっ!って言ってたよね…?


駐車場からうちまでの距離に危険な箇所なんてありえないし
そもそも駐車場からはフロアに続くエレベーターも設置されてる。

何だか不安になって、カバンからスマホを取り出すと
すぐに出てくる履歴の相葉さんをタップした。

『お掛けになった電話は…』

相葉さんのそれは、相手を呼び出すこともなく、無機質な音声メッセージに換わる。

どうしちゃったの?

何が起きてるの?

不安で不安で胸が苦しくなってきた。

怖くて、涙も滲んでくる。


いたたまれなくて、とりあえず外に行こうとスマホを掴んだと同時に

ピンポーン

…気の抜けたチャイムが鳴り響いた

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