今日も明日も
第61章 見えない鎖 part Ⅳ
「まーくん、怖い顔。…ごめんなさい」
恐る恐る、かずくんの伸ばした手が頬に近付いた
だけどそれは俺に触れる前にぴたりと止まって
小さく震えている
「違う。かずくんに怒ってなんか、ない」
今のかずくんは話した事で色々思い出しすぎたのか顔色も悪くて、これまで以上に自分を悪いもののように思ってるのが分かった
手を伸ばしても、触れられない
あと少しの距離が、かずくんには遠いんだ
「あ…っ」
かずくんの伸ばした手を掴んで、自分の方に引き寄せた
力のない体は簡単に腕の中に落ちてくる
両手でしっかりと抱き締めたら、かずくんが必死にもがきはじめた
「ダメ…、まーくん、汚れる…っ」
「汚れない」
「だって…っ、汚いから…、離して…!」
「汚くなんかないから」
手を繋ぐ事も、多少ならくっつく事も
慣れてきたと思った矢先にこれだ
まだ、かずくんに聞くには早かった?
だけどあんなかずくんを見たら、見てみぬフリなんて出来ない
“誘う“ 行為に何の疑いも持たないかずくんがあまりに危険すぎる