テキストサイズ

今日も明日も

第68章 見えない鎖 Ⅶ



俺だって、分かってたらかずくんを連れ出すなんてしてなかった

何も知らなかったとは言え、過ぎてしまったものはもうどうしようもない


「でも先輩…、引っ越すのもすぐなんか無理だし…仕事も………」

現実は “逃げろ“ “はい、分かりました“ なんて簡単に行くものじゃない

「分かってる。…とりあえずな、お前明日から1週間インフルエンザに掛かる事にするから」

「へ?」

「1週間、病欠なら誰も怪しまないだろ。
…いいか、その間は一歩も外に出るなよ?食糧は今日、買いだめだ」

次々に先輩が俺に指示を出し始めた

早すぎるその展開に付いていけない

「1週間の間に、俺が出来る手筈はしてやる。お前は弟くんの傍にいろ」

「先輩…でも…」

「ごちゃごちゃ煩い。俺はお前以上のおせっかいなんだよ!いいから黙って先輩の俺に従え」

“お前よりは俺の方が頭がいいからな“

和ますような、先輩の冗談とも本気とも言える一言

確かに今の俺は衝撃が大きすぎて何も考えられる余裕はない

「すいません…先輩」

俺に出来るのはかずくんの傍にいる事
不安にさせない事



…俺は素直に先輩の好意?を受ける事にした

ストーリーメニュー

TOPTOPへ