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恋桜

第1章 恋桜

 次の日も櫻は昨日と同じ桜の木の下にいた。そして話す。

 次の日もその次の日も同じ桜の木の下にいた。櫻と話すのは俺の日課になっていた。櫻は音楽やテレビについてあまり知らない。だから俺が教えてやった。櫻は笑って聞いてくれる。櫻は自然について詳しいので教えてもらった。




 だから……思わなかったんだ。櫻がいなくなるなんて。



 桜が散り始めたある日、櫻が信じられないことを言ったんだ。

「私は桜の精なの。桜が全部散ると消えてしまう」


 は? 何、言ってんの? 
俺は信じられなかった。あまりに非科学的すぎて。


「何をアホな冗談、言ってるんだよ? なわけないだろ」


 俺は笑って言ってやる。


「冗談じゃないわ。信じないならそれでいい」


 櫻は俯きながら泣いた。


「は? 意味わかんねぇし」

 俺は走って家に帰った。家に帰ってから俺は自室のベッドに塞ぎ込んだ。

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