
Beast 〜獣たちに好かれた僕〜
第8章 小山さん
小山「すいません…ご迷惑かけて…」
聖輝「いっいえ…あの…小山さんって…校長先生の…甥っ子さんなんですよね…?」
小山「えっ…僕…校長先生の甥って話しましたっけ…?」
聖輝「あっいや…僕の友達が情報通で……」
小山「そうですか…」
聖輝「すっすいません…何か勝手に……」
小山「いえ……僕…校長の五十嵐零一の甥で…周りからちょっと贔屓にされてまして…」
聖輝「贔屓…?」
小山「叔父は顔が広くて、権力者でもあるので…誰も逆らえないんですよ…」
聖輝「そうなんですか……」
小山「…だから校長の身内である僕に対しても皆さんああいう態度を取られるんですよ…」
聖輝「へぇ……」
小山「もしかしたら…贔屓と記憶障害が関係してるのかもしれません…」
聖輝「えっ?」
小山「僕の父親が海外で事業をしてるんです…IT関係の…」
小山「事業は成功して…小さい頃から裕福な生活を送っていました…」
小山「お金持ちだったから…僕の同級生や会社の人達からもちやほやされ…何不自由なく生きてきました…」
小山「でも…僕…心のどこかで…ちやほやされる毎日にうんざりしていたのかもしれません…」
聖輝「うんざり…?」
小山「はい…誰も本当の僕を見てくれようとしていない…見ているのは両親のご機嫌だったから…」
小山「それに気づいて…僕は部屋に引きこもるようになりました…」
小山「でも…両親の紹介で20歳の時に商社に入社しました。」
小山「一見息子思いの両親って思うかもしれないけど…違う。息子が引きこもりだって世間に知られたら恥をかく…要するに自分達の為に僕を無理矢理商社に入れたんです…」
小山「結局そこでもちやほやされて…障害を持ってる僕は人の顔と名前を覚えられず…辞めました。」
聖輝「えっ…辞めたんですか…?」
小山「えぇ…これをきっかけに僕は両親と不仲になり…家を出ました。」
小山「頼れる人もおらず…途方に暮れていた時に…叔父と会いました…」
小山「そして…記憶障害でも働ける…今の仕事を紹介してくれたんです…」
聖輝「そうだったんですか…」
