トクベツ、な想い
第12章 12
ー土曜日の夜
時間は指定されなかったから適当に用意して
録り溜めしてあったドラマをいくつか潤が来るまで見た
しばらくするとドアから数回叩く音がしたので
6時の針を視野に入れてからさっと立ち上がった
「お待たせ、翔くん」
「おう」
「早かった?」
「いや、準備はしてあったからいつでも大丈夫だったよ」
ドアに寄りかかり爽やかにキメるとさっすがーと潤は笑った
貴重品だけ持って部屋とマンションを出る
どこら辺なのか訪ねようとしたが、潤が歩いていく先を見て分かった
ここに一緒にいるのは2回目だ
そこまで経ってないけど懐かしく思う
初めて潤の気持ちを知った、俺の気持ちも動き出した路地裏
今、あの時みたいに潤がいなくなってしまったら
俺は…どうなるんだろうか
「翔くん、ここだよ」
しんみりと自分の世界に浸かっている間に着てしまったようだ
ぱっと店の外観を見るとなんだかレトロで
扉の横に置いてある小さな看板には"ダイニングバーMIKOSI"と書いてあった
路地裏に来た時のことが徐々に甦ってくる
ダイニングバー…
そういえば潤がよく行ってるって…オカマさんが…
あ!見つかったら教えてって言われてたんだった
すっかり忘れていた
地図まで書いてもらっといて…これは後で言いにいかなければ…
カランとドアについた鐘を鳴らして、中へ入っていく潤の後に続けて入った
少し照明が暗い、落ち着いた空間
バーにはお決まりのボトルが並んだ棚とその前には長いカウンター
丸いガラステーブルがちらほら周りにあったが客はまだいなかった
音に気付いて"従業員専用"扉から人が出てきた
ワイシャツの上にベスト、首元には蝶ネクタイ
イケメンなんだけど…なんか芸人でこういう人いたような…
なんかネズミみたいなコンビ名の…
…ど忘れしたからいいや
「あらー潤ちゃん久しぶりじゃない?」
「久しぶり、蓮くん」
あ、この人がオカマさん達の言ってた"蓮"って人か
見た目と口調が合わなくてちょっとビックリしたけど…
カッコよくキメてもオカマさんはオカマさんなんだな
よく行くって聞かされてただけあって仲良さそうに話す2人…
俺以外に向けられる潤の笑顔を間近に見てちょっとジェラシーが湧く