トクベツ、な想い
第12章 12
「蓮くん、この人」
「あら~」
「…へ?」
邪魔をしないよう大人しくしていた俺に急に振り返った2人
何何?と顔で訴えてるのにグイグイ潤に腕を引かれ、カウンターのイスに座らされた
横に潤も座ったところで
俺の前にカウンターを挟み"蓮"という人がにっこり微笑んで立つ
「初めまして、この店のオーナーで潤ちゃんとはちょっと深い仲の御越蓮(みこしれん)ですぅ」
「ちょっと、何深い仲って…誤解されるようなこと言わないでよ」
「何よ~荒れてた頃の恩を忘れたのー?」
「とにかく、違うからね翔くん」
「お、おん…」
何がなんだか分からず強引に納得させられると
御越さんがキラキラした目を向けてきた
あ、と座り直す
「初めまして櫻井翔と言います
えーっと…じゅ…松本くんとは会社の先輩後輩で…」
「もうそんな堅苦しくなくていいのに…でも可愛い」
「蓮くん!」
「いいじゃな~い」
「ダメ!」
俺の顔の前に腕を出して御越さんとの視線を遮ろうとする潤
誰もいないからって…御越さんオカマさんだし勘づかれるって!
ハラハラしながら2人を交互に見た
「ちょっと潤ちゃん…言ってないの?」
「…うん」
「ひっどーい、あんなに相談に乗ってあげてたのに…」
潤は謝っていたけどそれがなぜなのか、話が全く見えなくて俺は取り残されていた
御越さんはまたにっこりと笑って俺を見た
「知ってるのよ、あなた達のこと
順調に付き合えてるみたいで良かったわ」
「えぇ!?」
「ふふ、潤ちゃんは悩み事があるとここに来るの
主にあなたのこと」
「そ…なんだ…」
ちらっと横を向くと潤の横顔が少し赤かった
「蓮くんが…もし、くっついたら連れて来いって言ってたの思い出して…」
「もぉー付き合うことができたら真っ先に来てくれると思ってたのに酷い話よねー
でもまぁ相手はノンケさんだし、半分以上は連れてこない方を想像してたわ」
「俺もノーマルだよ、蓮くん」
「あら、そうだったわね」
いつから…ここでその相談をしていたんだろう
そういえば潤は俺のことをどのくらい前から想っていたんだ…
浮かんだ疑問を持って自分の世界に入っていると
カランと店の扉が開く音がした