トクベツ、な想い
第12章 12
会社に入ってから女性が怖いとか言ってられないくらいの残業三昧
教えてくれる人と一緒に、残業の合間の休憩でよく公共スペースに行ってたと聞いて
「ね…なんとなく分かる?
あの頃の翔くんも残業してた…1人の時もあったよね…」
去年の…たぶん彼女と別れて仕事だけに力を注いでた俺
「え…待って、ほぼ入った時から見てたってこと?」
「まぁ大体…最初は見掛けた程度だったんだけど
自然と見入るようになっちゃって…他の男の人にはなんにも思わないのに、翔くんだけで…
蓮くんに相談したら…そうなんじゃない?って」
約1年の片想い…そんなに?
確かに普通とは少しおかしいと思えるとこがあったような…
俺と話し出した頃の潤が思い出される
「ずっと翔ちゃんのこと、聞いてるわよ」
「なんでちゃん付けなの…」
「いいじゃないこれくら~い
会社すごい休んだ時もね、ずっとここにいたのよ?
家には帰らなーい、もう分からなーいって飲んで子供みたいでね
お店にいた女の子連れて飛び出してっちゃったのよ?」
「ちょっと…やめてよ…」
勘弁と潤が片手を額に置くと客の呼び掛けで御越さんが再び離れていった
ため息が聞こえる横で
あの時の状況が、ちょっと複雑だけど聞けて良かったと思っていた
「…少し平気になっただけで…やけになったのもあって、上京して女の人と2人になるのあの時が初めて…なんだよ?
信じてもらえないかもしれないけど
その子と部屋に入っても何もする気…なかった…」
「…信じるよ」
空のグラスを見つめて微笑む
そっと隣を向けば、鼻の頭が赤い潤が俺の服をきゅっと握る
何か言おうとしてたけど、手を離してトイレに行ってしまった
「なんか青春みたいだね」
「うおっ」
「それ、あたしの奢り」
俺の前には御越さんと同じ格好をした倫さんと
お洒落な皿に盛ったハンバーグが置かれていた
「潤とは違うだろうけど、気に入ったらアイツにレシピ教えといてあげるよ」
「え…」
「あたしと蓮が料理教えてあげてんの」
へぇ…すごい世話になってんだな…
もう嫉妬とかじゃなくて尊敬してしまう域だ
お礼を言って食べるとすごいうまくて
俺の表情から読み取った倫さんはキレイな笑顔を向け奥に行ってしまった