トクベツ、な想い
第12章 12
「ところで、どこまでいってるの?」
「ぶほっ!」
不意討ちの御越さんの言葉にハンバーグの肉片が飛び散った
この兄妹ってこういう登場しかできないの?
しかも食べてる時にそんな質問…
いそいそとおしぼりで片付けて
渡された水をむせながら飲み、なんとか自分の体を落ち着かせた
「キスした?」
そんな笑顔で…他に客いるのに…答えた方がいいのか?
早く帰ってこい、潤…
「まぁキスぐらいできるわよね…その先は?」
少し俯き、口を閉じたけど…
こんなのまだですって言ってるようなもんだな…
「…女の子相手にしてきたんだものしょうがないわ
付き合ってるって言っても男の子だものねぇ…」
「……はい」
つい返事をしてしまった
もう誤魔化せないだろうし、小声で話せばいいかと顔を上げる
「アタシね、男も女も好きなバイなの」
「あ、さっき聞きました」
「あら早いわね……
アタシね、男とか女とか…そういうこと深く考えたことないのよ
だって、両方とも"人"にはかわりないでしょ?」
「まぁ…」
「同性同士って批判される対象になってるけど
アタシは間違ってるなんて思わないわ
世間の理解は薄いし、アタシがオカマだから説得力ないかもしれないけど…性別を気にする前に、一番はその人を好きかどうかが大切なのよ
…潤ちゃんのこと、好き?」
その人を好きかどうか…
俺は"はい"とストレートに答えた
すると御越さんから笑顔が消え、真剣な眼差しが向けられた
「生半可な…からかってるだけなら許さないわよ?」
本気で潤を想って言ってることが強い眼光から伝わってくる
「……俺も潤も恋愛対象は女性です
でも俺達は、男同士だけど引かれ合いました
きっとそれは性別とかじゃなく、人として好きだからだと…思ってます
体はなんと言おうが男だけど
想う気持ちは潤が男でも女でも、俺がどっちかだったとしても変わらなかったはずです…」
伝えられたかは分からないけど
俺も本気の…素直な気持ちを言えたと思う
次第に御越さんに笑みが戻る
「良かった…
そこまで想えてるなら気持ちの面は大丈夫そうね
でも…持って産まれてきた体はどうしようもないものね」
「…はい…」
痛い想像から…離れられない