トクベツ、な想い
第14章 14
ー「…翔くん」
「ん…」
目をぼんやり開けると、目の前に潤の黒い瞳があった
寝てる間にいつの間にか潤と向き合って
しかも腕枕までさせてたみたい
「ごめん…あ、会社…」
潤の腕から頭を浮かして時計を見れば
まだ準備するには早いなと考えるものの、さすがに起きるかとベッドに手をつき体を浮かせる
「まだ大丈夫?」
「…まぁ…」
「じゃあもうちょっと」
腕を引かれ寝る前と同様、ぎゅっと抱き締められる
会社に行く時間までずっと
特に何が始まるわけでもなく、飯も食べず
それだけで温かくて…胸がいっぱいで…幸せで…
2人で寄り添いあってぬくもりを感じあってた
ー「…ーい、おーい、櫻井ー」
「…ん?」
「ん?じゃねぇよ」
「話の途中でどっか行ってたぞお前、すげぇニヤニヤして」
「あ…わりぃ」
「んだよ…そんなに俺の話興味ないのか…」
持っていた缶コーヒーを口に流し込んでから
わざと頬を膨らませる待田にごめんと謝った
今は昼休み中
公共スペースのソファで2人、飯を食べ終えてゆっくりし待田の彼女のノロケ話を聞いていた
だけど俺は潤と一緒になったことで
前より潤のことを考え浮遊してることが多くなって
仕事中は気を張ってるんだけど、それ以外ではどうもこうなってしまう
「俺の話はいいや…お前は?」
「……」
待田には"大切な人ができた"とは言ってある
でもこうやって聞かれることが増えて
この言葉にいつもどう答えればいいかって思考を巡らしていた
「あー…俺の話もいいよ」
「またかよー…まだはぐらかすのかよー」
「いいだろ」
ふっと笑いながらカフェラテを一口飲んだ
「なんでみゆちゃんじゃないんだよ」
「え?」
「お前狙ってたんじゃねぇの?」
「…んなこと言ったらお前もだろうが」
「ま、まぁ…」
潤と出会わなければもしかしたら、なんて
出会って良かったと思ってるから考えない
もう潤がいない人生の方が考えられない
「いいんじゃない?…待田はさ、今幸せなんだろ?」
「…うん」
「ならいいじゃん…俺も…今幸せだから」
缶を見つめながら潤の笑った顔を思い、それにつられて自分の口角も上がった