トクベツ、な想い
第14章 14
「…お前変わったな」
「そう?」
「元カノの時となんかこう…雰囲気?
とにかく全然違う、そんな風に笑ったことなかったろ?」
「え…どんな風に笑ってた?」
「前はなんかぎこちないってか影があったっていうか…今は本当に笑ってるって感じ」
コイツの観察力には驚かされんな…
でも言われればそんな気も…
確かに元カノの時は不安が強くて…あぁ思い出したくない
今俺の隣にいるのは潤なんだから
すぐ脳裏に満面の笑みが浮かんだ
「ふふふ」
「…前よりキモくなったな」
「うるせぇよ」
2人で缶の中身を飲み干し、休憩が終わるのと同時にデスクの上の最終企画の紙に目を通した
ー7月に入って少し雨が増えた
今日もぐずついた空を部の窓から見上げ、帰り支度をしていると
「櫻井さん!」
小走りでみゆちゃんが近付いてくる
「お疲れ」
「あ、お疲れ様でした
あの…EA部に入った子のこと知ってます…よね?」
「あー…」
前に潤が可愛いって言ってた子のことかな…
「うん」
「気をつけてください」
「へ?」
「櫻井さんと松本くん、あと数人の男性社員が狙われてるらしいので!」
狙われてる…その子はスナイパーかなんかなの?
「ごめん、話が見えないんだけど…」
「え…その子格好いい人に目がなくて
気に入った人は片っ端から自分のものにしちゃうって…聞いてませんか?」
「はは、すごい噂だな…知らなかった」
「笑い事じゃないですよ!とりあえず気をつけてくださいね!」
「…はい」
軽く挨拶をして帰っていくみゆちゃん
押し寄せる剣幕に頷いちゃったけど
顔も見たことないのに何をどう気をつければいいんだ
こっちの部署に来たことあんのかな、その子
まぁ会ったら考えるか、ぐらいに思って
俺も帰るべく会社の出口まで歩いていった
「あー傘…」
外は案の定、雨が降っていた
湿気と生暖かい風が体にまとわりつく
朝出る時に、今日はギリギリいけるかなと思って傘を持ってきていなかったけど
もしもの時用にと傘立てに刺しっぱなしだった傘を探し、見付けだした
早速外に向かい差そうとすると
さっきまで誰もいなかった少し離れた場所に、空を見上げる女の子が立っていた