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トクベツ、な想い

第2章 2




なんかホントに俺の部屋みたいだな…

間取りが似てる



辺りを見回しながら玄関に足を進めた



丁寧に揃えて置いてある靴をフラつきながら履き、ドアノブに手を掛ける

ふと後ろの気配に部屋側へ振り向くと
心配そうな顔をした松本くんがいた



きっとさっきの待田のことでめっちゃ落ち込んだ顔してんだろうな俺…



今は気持ちを切り替えて、と微笑んでみせた



「大丈夫、帰れるからそんな顔しないで」



こんなフラついたとこ見せといて説得力のない言葉だけど
これ以上迷惑かけるわけにはいかない



「はい…体、お大事に…おでこも」


「…はは、ありがとう…」



もう忘れてたわ…


はずかし…



ほんのり顔が熱くなった




″じゃっ″とドアを開け
笑顔を向けながら静かに閉めると



「…あれ?」



見慣れた廊下

閉めたドアも見覚えがある…



「あ…なんだよ、同じマンションか…どーりで」



部屋の間取りもそりゃ似てるよな
配置はちょっと違かったけど…なんで気付かなかったんだ…



「302号室…俺の上かよ、近っ」



小さく独り言を言っていると
白い息がどんどん口から出ていった



昨日新年会のことで頭いっぱいになって会社にコート忘れたんだよな…



まだ1月の寒い朝

ぶるっと体を震わせた




非常用の階段で2階までゆっくりおりる




202号室
ここが俺の部屋





鍵を開けて入ると松本くんの部屋とは違い
色んなものが床に散乱している



片付ける気は今のところない



リビングのソファにカバンを置くと

彼の部屋とは配置が反対の寝室に入った


すぐにジャケットを脱ぎ
ズボンはシワになっていないことを確認してからクローゼットにしまう



適当な部屋着に着替えてキッチンの冷蔵庫を開けた


相変わらず食べ物は何もない


…何も買ってないしな



500mlの水のペットボトルをとって一口飲んだ

冷たさがすーっと喉を通って気持ち良い


パタンと閉めるとそれを持ったまま再び寝室に足を運んだ



「松本くんもセミダブルだったな、すごい青かったけど」



白と黒のチェック柄の布団が掛かる自分のベッドを眺めながら

だからなんだ、とツッコまれそうな独り言を漏らしてベッドの真ん中で仰向けになった

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