トクベツ、な想い
第15章 15
キッチンに袋を置き、グラスやタバコを片付けていると
「翔くん、入ってきなよ」
「ん」
上がった潤に促されて浴室に行った
さっと済まして脱衣所で髪をわしゃわしゃ拭いている際、ふと鏡に何か映った
「ん?…なんか首んとこ…」
左横よりもう少し後ろのギリギリ髪が掛かってるとこ…
片手で軽く毛を上げてみると赤く映るそれ
鏡に寄ってよく見てみたけど…何これ、虫刺され?
「…でも痒くねぇな…」
手で何度も触ってみたが膨らみもないし、まぁいいかと服を着て脱衣所を出る
俺が上がるタイミングを分かってたかのように料理が今、温め終わって皿に移されていた
ソファに座りそれを2人で食べ出した時、左隣にいた潤がこっちを見て止まった
「…なんだよ…」
「いや…結構ついちゃったなって思って」
「何が?」
「…キスマーク」
「…え!?」
そうか、これはキスマーク
こんなとこに…てかつけられること自体ないと思ってた…
「目立たないとこだから…
加減できてなかったみたいで結構濃くついちゃったけど、髪で隠れてるから大丈夫」
「おまっ…大丈夫って…」
焦る反面、ちょっと嬉しかった
また"証"ができたようで…
口角を上げながらパスタを食べてる潤の首筋に近寄り、右だけど同じくらいの見えないとこに吸い付いて痕を残してやった
「い、ちょっ…」
「これでおあいこ」
「も…バレたらどうすんの…」
「最初にやったのは潤じゃん」
つけられたところに手を置き、顔を真っ赤にして"はい…"と元気なく返事をしていた
ベッドの上とは違うギャップにクスクス笑って…
愛しい空間
ここに不安なんて微塵もなかった
ー次の日、宣言通り御越さんのところへ行った
「いらっしゃい」
「こんばんは」
「今日は倫ちゃんもいるんだね」
カウンターにはグラスを拭きながらこちらを睨む倫さんが…
「ごぉめんなさいねぇ、倫ったら今日の朝からずっと不機嫌で…ほら、注文とってきなさい」
今日はすでに数名の客がいて、倫さんは渋々そっちへ寄っていった
「なんかあったの?」
「んーまぁちょっと…お店のことでね
そんなこといいのよ、ちょっと待っててね」