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トクベツ、な想い

第16章 16






なんだそれって思うけどうまく考えられない



「聞いてますー?」



頭の中がごちゃごちゃだ

いつもの倍速で乾く目をひたすら瞬きして湿らせる



「答えはイエスでいいですか?」


「っなんで…」


「だって…自然の摂理に反してると思いません?
櫻井さんより、私といた方が未来永劫こんな責められるような思いしないんですよ?」



それを言われてしまったら…

やめろ…心が揺らぐ…



「お2人はゲイなんですか?」


「ち、違うっ」


「ふーん…珍しいんですね
なら益々私といる方がいいですよね?」


「…でも、松本くんは…君のこと好きでもなんでも…」


「好きに、させますよ…」



艶やかに笑う葵ちゃんに、本当にとられちゃうんじゃないかと思った

堪らず唾を飲み込んで顔に伝う汗を拭った



「んーしぶといですねー…
じゃあ櫻井さんでもいいですよ?」


「は…?」


「松本さんの代わりに」










ドスンと衝撃がきた


瞳が恐怖に激しく揺れ…過去がフラッシュバックする








…やめろ










「お、早いな」


「!?…あ、お、おはようございます…」



ドアを開けて会議に参加する社員がぞくぞくと入ってきた

上司である人達に、混乱する頭でも礼儀として挨拶と会釈をしていく


今日は男性社員のみの会議

何も知らない彼らは葵ちゃんに群がって
彼女はちやほやされ、やだーと可愛く笑っていた

こっちは仕事用なのか…



「じゃあ私はこれでー」



そっと突っ立ったままの俺に小声で"考えといてください"と言って出ていった



「櫻井くん」


「…あ、はい」


「何してる、座りなさい」


「すいません…」



今は会議だ…

とは言え
頭のネジを狂わされて、過去の傷をパックリ開けられて…

用意してきた俺の企画のプレゼンは散々だった









「はぁ…」



企画案を自分のデスクにバサッと置き、イスに腰掛けた

"どうしたよ?"待田の問いにも答えないで頭を抱える

まさか会議の準備の仕方が分からないってのは…嘘か?…予感的中?


…なんでたまたまであんな写真とか動画とか…

おかしいだろ

潤か俺かなんて、そんなのどっちも嫌に決まってる


どうすれば…

あーもう…最悪


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