トクベツ、な想い
第17章 17
ー会見から何日かして仕事は今のところ落ち着いていた
「櫻井さんっ」
「やめろ」
彼女の行動はエスカレートしていた
幾度払って、やめろと言っても
俺を見つけては腕に飛び付いてきた
周りはそんな俺達を避けるような目で見た
中には葵ちゃん狙いの男性社員に睨まれたりして…
そんな気はさらさらないのに
でも俺のところに来るということは
本当に潤に興味がなくなったのかとホッとするところもあった
2人で歩いてる姿なんて…今の俺には耐えられない
定時で帰るか…と
部署から出て歩いている最中、俺はまた彼女に捕まった
電波を張っていてもいきなり過ぎて予測できない
「っもう…ホントやめろよ…」
ブンブンと腕を振るが、笑顔のまま離そうとしない
女性だから手荒なことはできないし…
上司に相談しようにも
付き纏われます、なんて逆に羨ましく見られそうで
相手にされない気がする
不審な目を向ける周りが、なんとかしてくれたらいいんだけど…
「…あ…」
最悪だ
今まで散々注意を払ってきたのに…
廊下の奥からこちらに向けて、紙を何枚か見ながら歩いてくる潤
不意に目線が上がって俺達をじっと見た
1番…見られたくなかったのに…
心がえぐられるような感覚がした
しかし潤は動じず目線を下げ直すと
何事もなかったかのように横を通り過ぎていった
「……は…」
そうだよ…
終わったんだもんな…俺達
改めて思うと肩から力が抜けた
「…櫻井さん…」
君は…何をしてるの…?
一緒にいるとこは見たくないけどさ
目的だったんだろ?
通り過ぎたのに、寄りもしないのはなぜ
「大丈夫ですか…?」
やめろよその目…
傷心のせいか優しく見えて、俺はどうしたらいいのか分からず
ただ振り払ってきた手を、今回は振り払いきれず受け入れてしまっていた
「…今日、一緒に帰りません?」
その場で小さく言われると
迷ったけど、間を開けて…目を伏せて
「………いいよ…」
同じように小さく答えた
いいよもう
従おう…
俺には失うものも…
何もなくなった
どうでもいい
疲れたんだよ
転がってやるよ、この子の手の中で…