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トクベツ、な想い

第2章 2






薄く笑って自分のデスクに戻ろうと振り返る



「櫻井、呼んでるぞ」



廊下側から″呼んでる人″を横に上司が声をあげた


あ、という顔をしながら廊下まで小走りで向かう


上司はどこかへ行く途中だったようで
俺の様子を見ると足早に去っていった



「松本くん、一昨日はホントにありがとう」


「いえいえ、もう体大丈夫ですか?」


「まぁなんとか…しばらく酒は控えるよ」


「その方がいいですね、あ」



思い出したように俺の前に資料を出してきた



「これ、前に頼まれてた資料みたいなんですけど
やっと見つかったみたいで」


「あ、助かるわー
でもこれ違う人に頼んであったんだけど…」


「櫻井さんの様子を確認したくて…
届けさせてもらうよう僕が頼んだんです」



資料を片手で受け取って笑顔を見せる松本くんに



「ありがとう…あ、良かったら今度食事でもどう?」


「…え?」



お礼と思って言ったつもり、なんだが…



あれ、返事がない…


顔の前で軽く手を振ってみる
反応…しない



情けない姿を見せたせいで引かれているのだろうか



「ごめん、嫌なら…」


「行きます!」



急に動き出した松本くんに言葉を遮られると同時にビクッと肩が揺れた


どうやら嫌そうではない
むしろキラキラした顔を見せている



「そ、そう…?じゃあ…あ、iPhone…
とりあえずここに番号書いてくれる?」


「はい」



カバンにあるiPhoneを思い出して

行ったり来たりも面倒だと近場のフリーデスクにあるメモ用紙を1枚とボールペンを取り、渡した



それを受け取ると手のひらに用紙を置いてすぐにさらさらとペンを走らせていた



「今週はちょっと忙しいので来週辺りなら大丈夫だと思います」


「…あぁそれはこっちも一緒
来週良さそうなとこで連絡するよ」


「はい、待ってます!じゃあまた」



番号が書けた用紙を受け取ってから
元気のよい返事をしてEA部へ戻っていく松本くんの背中を見届けた


紙をジャケットのポケットにしまうと
資料を持って仕事に戻った



会社の人と出掛けるなんて会社のイベント事とか無ければ待田以外では数人しかいない


彼女と別れてからはもしかしたら初めてだろうか…


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