トクベツ、な想い
第2章 2
―今週は本当に忙しかった
新しいアプリを開発する少し大きなプロジェクトが進み出していた
この前の企画案はこの為に練っていたもの
俺たちの階の社員はフルで働いた
当然EA部も支えに参加してるもんだから
もしかしたら来週もこんな感じかと
ポケットの紙に触れては食事の約束を思い出して、また仕事に思考を奪われる日々が過ぎた
―「土曜出勤ってだりー」
待田の盛大なぼやきが部に響く
今日は来れる人だけの数人で仕事をしていた
部長も用でいないし、気楽だ
休日出勤は手当てが出るから俺は別に苦ではないが
まぁ恋人がいると違うわな…
「明日は休みになるよなーさすがに」
「そりゃそうでしょ
ぶっ通しでやるなんて体もたないし」
「だよなー…なんか予定あんの?」
「おう、高校ん時の友達と遊んでくるわ」
明日の為に前々から計画を立ててた
友達との日帰り旅行の約束
当然こっちが優先、楽しみで仕方がない
「待田は彼女とどっか行くの?」
「んーどうしよっかなーなんも考えてねぇや」
「ひっでーな
新年会の時に女の子に絡みまくってたこと言うぞ」
「おい、やめろよ」
「はは」
そんな感じでまったりした雰囲気の中、仕事を進めていった
―松本くんと約束した″来週″の木曜日
何度も会議してこんな感じにしよう、と大まかだが触りぐらいの案が通った
まだまだ続くけど
一段落というようにやっと仕事は落ち着いた雰囲気を醸し出し始めている
その証拠に今日は残業がない
″よし″と会社へ行く準備を終えるとポケットから紙を出して
iPhoneにそれを見ながら番号を押していき電話をかけてみた
松本くんも準備中かもと思ったけど
常に顔を会わせる訳じゃないから今日行くなら今言っておかないと…
こういうところはきっちりした性格がよく働いた
『…もしもし』
「お、出た、はよ
櫻井だけど今大丈夫?準備中だった?」
『あ、櫻井さん!おはようございます
準備中…ですけど大丈夫ですよっ』
松本くんの低い声
ダイレクトに耳に響いて…なんかドキドキする
って何言ってんだ俺!
「悪いな、今日なんだけどさ
俺たぶん定時で帰れると思うんだけど…そっちはどう?」