トクベツ、な想い
第17章 17
ー「翔ちゃん、今日は松潤呼ばないの?」
「何それ…あだ名?」
「ふふ、うん」
「今日は…忙しいみたいでさ…」
久しぶりの丸々休みの日に、雅紀とニノが俺の部屋に来ていた
潤のことも、あの子のことも一瞬でも忘れたくて…
この2人なら紛らわしてくれるんじゃないかと、俺が呼んだ
「またゲームでもする?
今日もたくさん持ってきましたよー俺の自信作」
「ふ…自慢かよ」
「そりゃ自慢するでしょうよ、俺会社のホープなのよ?すごくない?」
「あーすごいすごい」
「あいばかは早くなんか飯作れよ」
「なんか冷たくない!?」
はい、ケンカ
いつもは笑って見てられんのに…ダメか
気持ちは底辺から上がってこない
「あ、待って…良から電話」
「ばっ相葉さん!」
「あ…」
俺を見て、気まずく目を泳がせる2人
雅紀の手の中で着信音が鳴り続けて止まる様子はない
「…出なよ」
「うん…」
気を遣ってスマホを持ったまま、雅紀が部屋の外に出ていった
「…全く、うるさい…ね」
「連絡してんの…?良と…」
「……俺は…そんなに」
「そっか…ごめん…」
動揺するニノを放って
ソファに座り、ぼーっと一点を見つめた
頭にこだまする名前が意識を集中させ…過去が、掘り起こされた
俺には中学の時から仲の良い友達がいた
雅紀とニノと…後2人
その1人は伊藤良人(りょうと)
俺と似たような顔立ちで、兄弟のようだと周りからは言われていた
でも良は俺より勉強も、スポーツも出来て
優しくてカッコよくて…女子からも男子からも支持を受ける爽やかなやつだった
全員サッカー部で
そこでマネージャーをやっている女の子が最後のもう1人、小島美咲
…俺はずっと彼女が好きだった
友達という言葉をかざしてたけど、いつの頃か想いを寄せていて
それは雅紀もニノも気付いてた
ただ良と本人は気付かず、伝える勇気もなく卒業して
全員で同じ高校に進んだ
勉強して、部活をして…俺の気持ちはかわらなかったけど
2人も押してくれたけど…言えなかった
でも5人で過ごした3年間はとても有意義で…充実したものだった
受験が過ぎ、大学は良以外が同じところに進んだ