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トクベツ、な想い

第17章 17






まだ日によっては頭痛がする


心も痛むけど、どうしたら治るのか

潤を少し見ただけで胸が締め付けられて…痛みは悪化し続けた


未練がましく引きずって女々しいな

口からはため息ばかり、俺のやる気と元気が空気になって飛んでいく


生きてる心地なんかしなかった








「櫻井さん、今日こそお家教えてくださいよ」


「……ヤダ」



最近そればっかり…

言うわけないだろ、言ったらどうなるか大体予想がつく



「もう…」



会話はそれだけで特に話すわけでもなく、腕を掴まれ帰りの道を歩く

彼女にとってこれは楽しいことなのか

にこにこ笑える訳が俺には分からない


なんなんだろ、この子


いつになったら自由にしてくれるのか

…そうなったところで俺は1人


もう次の恋に踏み切ろうって思えないんだ

次がなければ孤独で…寂しい人生になるって思うと

認めてなんか、許してなんかないけど
寄り添ってくれる人がいないより…今のままの方がいいのか


…何を考えてんだ…


俺はどうしたいんだ…


いけない、考え過ぎて頭が麻痺している



「…え?」



いつものように葵ちゃんの家に向かっていたのに、急に違う道に変更された

俺は自分が転ばないようにだけ気遣って彼女の行く方へ黙ってついていく



「……ここ…」



見たことのある風景

それもそう、マンション裏の路地に入っていた


引かれるままに歩いていたが迫った建物に足をぐっと止める

つられて止まった彼女は



「…櫻井さん、行きましょうよ…」



懇願する瞳を向けた

ピンク色に光ったラブホテルの看板の前で、俺は首を横に振った



「…そんな気ない…」



抱けない

この子だからとか、勃たないからとか、俺が女役だからとかじゃなくて

何度も交わった潤の感覚を無くしたくなかった



「入ったら…なりますよ」


「…ならない」


「私、うまいですよ…?」


「…無理」


「……1回でいいからっ」



葵ちゃんは何か必死で、ぐいぐいと入口まで俺を引っ張る

目には少し涙が浮かんでいて…気を抜いたら負けてしまいそうだった


…女の涙は怖い


やめろ…



「…嫌だっ」



繰り返し言って、意外と力の強い彼女を後ろに引き戻そうと粘った

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