トクベツ、な想い
第17章 17
「翔ちゃん!」
「…え」
引っ張られながら声のした方へ向くと買い物袋をぶら下げた
御越さんと倫さんが立っていた
「…みこ…」
こんな、潤以外の…
しかも女の子に…ラブホへ引き込まれそうになってる姿を見られた
…情けないって、恥ずかしいって…なのに
2人の顔を見たら、なぜかすごく安堵して
「……っ…」
感情がぐちゃぐちゃになって…顔が勝手に歪みだす
「何してんのよ!」
掴まれてる手を御越さんは払ってくれた
「誰!?邪魔しないで!」
「無理矢理引っ張っといてよく言うわ、嫌がってるじゃない…こんなの誰が見たって止めるわよ!」
2人で言い合いをして…俺はそれを茫然と見ていた
タバコを吸いながら近付いてきた倫さんに
「…あの子と…入るつもりだったの?」
違うと答えると葵ちゃんの方へ足を進めていった
なんの前触れもなく、タバコの煙を顔に向かってふーっと吐きだす
「っごほ…何す…」
その隙に御越さんは俺の手を掴んで走り出した
つられて走るけど、後ろから倫さんは追ってきてなくて
「御越さん…っ倫さんは…」
「は…大丈夫よ、あの子元ヤンだから」
そういうことじゃなくて…
辺りは暗いし女の子だけでいるなんて危ないんじゃ
それに…俺の為にこんな…
「はぁはぁ…迷惑掛けてると思ってる?」
「…え…」
「アタシ達がやりたくてやってるだけだから…っは…翔ちゃんは気にしなくていいの…」
この人はエスパーでもあるのかな…
後ろから誰もこないと分かるや、徐々にスピードを落として歩きだした
「…はぁ…大丈夫そうね…」
「足…はぁ…早いですね…」
「元陸上部だからね…」
「…すごい…」
「ね、翔ちゃん…最近来ないわね…」
隣の優しい声に、自然と目尻から水滴を落とした
「………御越さん…俺…おれっ…」
「そう、なんかあったのね…
もう…また息子を持った気分だわ、ふふ…お店でいっぱい聞いてあげる」
ラブホから御越さんの店は近かったけど
わざわざ逃げる為に色んな道を通ったからいつもより遠く
初めて見る建物を見ながら、時々目を擦って店まで足を運んだ