トクベツ、な想い
第19章 19
俺は引かない腰の痛みと足の疲労感に耐え、なんとか走っていた
少し先で振り向き俺の様子を伺う潤に
大丈夫だからと微笑みながら、やっと会社に着いた
「じゃあね、翔くん」
「おう」
ギリギリにそれぞれの部に入るや、みゆちゃんが駆け寄ってきた
「水原さん、辞めたって本当ですか?」
「え…辞めた?」
「あれ…知らなかった、ですか?」
「…うん」
そうなんだ…
なんか昨日の潤との復活で、頭がいっぱいになってしまって忘れかけていた
「すいませんってさ」
「…はよ…あの子が?」
「うん、お前来るの遅いから
俺が伝言頼まれた…すげぇ謝ってたぞ」
「そっか…」
…潤の言葉で、彼女の中の何かがかわったんだろうか
なんだかホッと肩の荷が下りた気がする
「あれ?お前スーツ新調したの?」
「え…あ、いや…なんか他に言ってなかった?」
「ん、えーっと…なんか消しますって言ってたな…」
パソコンに入れたデータか
これでホントに解放された…
「突然過ぎて上司達が困るって…別の意味もあったとは思うんですけど…
でももう朝には辞表出してさっさと行ってしまったみたいです」
「そっか…教えてくれてありがとう…」
「いえ、私は櫻井さんの味方ですから」
みゆちゃんはあの子といた時、決して俺に冷たい視線など向けなかった
待田と同じく側にいてくれた
「またまたー彼氏に言っちゃうぞー」
「やめてくださいよー」
「…え?」
「あ、みゆちゃん彼氏できたんだって」
「おー…おめでと」
「そんな、ありがとうございます」
照れ臭そうに笑う顔はとても幸せそうだった
良かった…見付かったんだな
素直に嬉しくて、いい子だって知ってるから尚更
その彼氏にたくさん幸せにしてもらって欲しいと思った
昼休みに待田と食堂に行って定食を久しぶりに頼んだ
周りからは少しひそひそ話が聞こえたが気にしなかった
「僕も一緒にいいですか?」
座ろうとした時
同じように定食を持った潤が、にこにこして空いてた席に座った
「おぉ、もちろんもちろん松本様」
「ありがとうございまーす」
促しつつ待田も座って
その横になんで?と目をぱちくりする俺も座った