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トクベツ、な想い

第3章 3





俺が黙っていると泣きそうな顔は一変して笑顔になり
今の話には関係のない質問や仕事の話をしてきた

それがなぜか必死に見えた

でもその話に答えてやると普通に笑っていた


さっきの顔はなんだったんだろうか…



「失礼します、すみませんお客様
当店、大変混みあっておりまして…

予約の際お話致しましたが、2時間でお席を空けていただきたいと思います
よろしいでしょうか?」


「あ、はい」



よろしいも何も
もしもの時はと言われて承諾済みだった

でないと予約は厳しい
人気店となると尚更

どこの店でもこの対応は増えてるらしい
効率よく回して客を多く入れるため



「ごめん、松本くん…いい?」


「はい、ここのお店はしょうがないですよ
食べられただけで良かったです」



それを聞いた店員は申し訳ないと深々頭を下げて店の奥にいった

店員の態度も良好
料理もうまいし、また来ようと思った


側にあった店の時計を見ると
後15分で入店してから2時間が経過するところだった



「いつの間にこんな経ったんだ…あっという間だったな」


「本当ですね、2時間ってこんなに短かかったかな…楽しかったってことですね」


「そうだな、ありがとう松本くん
付き合ってくれて」



前半はなんか気まずくなったけど
後半は普通に楽しかった

松本くんは嬉しそうな顔をしながら、いえいえと首を振った


テーブルの上の料理を食べきって立つとコートを着てカバンを持つついでに伝票も持った



「あ、いくらですか?」



財布を出してる姿に軽く笑いかける

さっさと会計まで足を進めてご馳走様と金を払い外に出た

後ろから靴の音を響かせて松本くんが俺に追い付いてくる



「ちょ、櫻井さん!お金!」


「いいって…俺が誘ったんだから」


「ダメですよ!僕だけお酒も飲んでるし」


「それも俺が飲むように進めたんだからいいんだよ」


「で、でも」


「あーもう
こういう時は先輩が払うもんなの、立てさせろって」



松本くんの肩をぽんっと軽く叩く

でも、納得できてないっていう顔

あんまりこういう機会がないのだろうか

笑顔を向けていると



「…すいません、ありがとうございました」



渋々納得して頭を下げられた

頑固でもあるんだな、新な一面が見れた

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