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トクベツ、な想い

第3章 3





「…早く言ってくれればあの時、櫻井さんの部屋まで運べたのに」


「いやいや、松本くんも同じマンションだって俺知らなかったし」


「あ、そうか…」


「酔ってたとは言え、寝ちゃって教えることができなかったのは申し訳なかったけど

でもあれがなければ松本くんとこうしてることもなかっただろうし、情けない姿は見せちゃったけど…俺は割りと良かったと思ってるよ」



2階に着くまでにそんな話をして
静かにエレベーターの扉が開く

そこから短い距離を歩いてすぐの部屋のドアノブに鍵を差し込んで開けた



「どうぞー、散らかってるけど」



壁にある玄関の電気のスイッチを押して松本くんに振り返ると顔が真っ赤だった



「…もしかして酔ってる?」


「い、いいえ」


「そう…」



おかしいなと首を傾げつつ靴を脱いで部屋に入る

そこからリビングに向かう途中、床に散らばる服を拾って進んでいると

玄関のドアが閉まると同時に少し引いたような″お邪魔します″の声が聞こえた



松本くんの部屋、綺麗だったもんな…


苦笑いしながら床から拾い集めたものを寝室に投げ入れた

ついでにベッドの横にカバンを置いた

リビングの電気も点けてソファの前の小さいガラステーブルに買い物袋を置く



「適当に座ってて」



遠慮気味に入ってきた松本くんに言うとキッチンにあるこれまた小さな食器棚からグラスを2つ取り出す

その間に松本くんはテーブル横のラグに正座をしていた



「ソファに座ればいいのに」


「…あ、すいません」



グラスをテーブルに置いて
立ったままジャケットをもらうと俺のと別々にハンガーに掛けて適当にぶら下げた



「すご…座り心地いい…」


「だぁろ?そこはちょっとこだわったんだ
長いこと住むし、たまにそこで寝たりもするからね」



暗めの赤い2人掛け用のこのソファは結構良い値でインテリアショップに売っていた

革と迷ったけど布張りにして、背凭れは低反発素材なこともあり
程よい肌触りと座り心地で…何より色が好きだった

それに合わせてこの毛の短いグレーのラグも買った

両方ともお気に入りだ


横に座ると袋から買ってきたものを出した

松本くんが気を遣うから家ならと
新年会の時の反省も踏まえて1缶だけ買ったビールもテーブルに出す


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