トクベツ、な想い
第3章 3
お互いのグラスにビールを注ぎ合う
本日2回目の乾杯を交わし喉に流し込んだ
「っあ″ー…うまい」
「ふふ、おじさん」
「おい、コラ」
松本くんは待田とはまた違う話しやすさで
打ち解けていっているかのように会話が進んだ
「下の階なんて思いもしなかったですよ
すいません、上で」
「そんなん気にしないって
誰も知らないから文句言う奴もいないし」
「本当に教えてないんですね」
「まぁ…いきなり来られたりしたら対応に困るしさ、さっきみたいな汚い状況見られるのも…ね」
「僕見てますけど」
笑う松本くんにそれもそうだな、と軽いつまみを食べながらなんで彼はいいんだろうと考える
「…松本くんにはもう情けないとこ見られてるし、何より同じマンションだし」
「なるほど」
自分で言った言葉に俺自身も納得していた
目の前のテレビもつけ
さっき同様また会社の話で会話が弾んだ
-ふと壁の時計を見ると10時近くになっていた
俺はビールを1缶と後はお茶で済ませてるから平気だけど
気付くと松本くんの前のテーブルの上には
まだ入っているお茶のペットボトルと空のビール缶が3つも置いてあった
テレビのニュースを真剣に見る松本くんの手に握られたグラスには、最後のビールが少量入っている
「松本くんって酒強いんだ」
「え…いや、そういうわけじゃ…
いつもなら結構酔い始める頃なんですけど
今日はなんでだろ…あ、ビールだからかな」
「普段は違うの?」
「いつもは焼酎の方が…」
「おぉ、大人だね
俺も飲むなら焼酎の方が多いよ」
若いからお洒落なのばっかなのかなと思っていたら
意外にも酒の話は合った
ただ松本くんは詳しく話せるぐらいワインが好きらしいのだが
俺はたしなむ程しかなくて、正直ワインが好きなのか嫌いなのか分からなかった
今度オススメされたワインを飲んでみよう
話の途中で何回目かのトイレに断って立つ
戻ると松本くんがうとうと目を瞑り首を振っていた
「松本くん、眠い?」
「あ…大丈夫です」
そう目を擦ってる様子は明らかに無理しているようで
「どうする?帰る?
もし無理そうなら泊まっていってもいいけど」
その瞬間カッと松本くんの目が完全に開いた