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トクベツ、な想い

第3章 3





「気にはなってるけど…元カノに似てて怖いんだ」


「怖い…?」


「…俺フラれたんだけどさ
それがその…ちょっと酷いフラれ方をして…それが若干トラウマで…もう同じ目にあいたくなくて、彼女を作るのが怖いんだ…」



待田にも言えなかったことが
なんでかあっさり白状してしまった

俺のせいでどうにも暗くなってしまった空気をどうにかしようと笑うが
引きつってしまってうまく笑えない


その様子を見てか松本くんの顔が段々と切なくなる



「…そうだったんですか、すいません
何も知らなかったとは言え、生意気なこと…言いました…」



深々頭を下げてきたので
気持ちを切り替えて、気にすんなと頭を起こしてやる

顔をあげても切ない顔は晴れなかった



しんと静まり返るリビング
テレビは松本くんが帰ると立ち上がった時に消してしまったので、時計が動く音だけ響いていた



「…僕、帰ります」



思い出したように玄関に向かっていく

静かに後ろを追うと靴を履いた松本くんがこちらを向いた



「…ねぇ、松本くんは好きな人…いないの?」


「え…」



店で聞くのをためらった質問

ただの好奇心と単純に俺の話をしたからってのもあって聞いてみたかった



「……いますよ」


「え、誰?うちの会社?」


「そうですけど…言いません」


「俺言ったじゃん」


「それは…ニヤニヤしてる原因聞いたらたまたま櫻井さんの好きな人の話になっただけで…」


「…まぁ、そうだけどさ」



気になる…

松本くんの好きな人ってどんな人なのだろうか

相手が惚れることはあっても
こんなイケメンに惚れさせるって…その人は絶対美人なんだろうな…



「松本くんはその人に告白しないの?」



さっき俺が言われたことを言ってみた
少し黙って俺から視線を逸らす



「…言いません…叶わないから…」



驚いてしまった
あまりにも自信なさげな声で言うから…

断る子なんているのか…

叶わないって…人妻とか?
いや、そんなとこに手を出すようには見えない

でも意外と…


頭の中が悶々としてしまった

でも口には出さない
誰にでも聞かれたくないことはある

俺にだって触れて欲しくない過去がある

…フラれたことなんてほんの1部なんだ
全部話す気なんて誰にもない

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