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トクベツ、な想い

第3章 3





「そっか…まぁ頼りないとは思うけど俺で良かったら相談くらい乗るからさ」


「…ありがとうございます…」


「こんなに話したの松本くんが初めてだし…
俺も相談させてもらっちゃうかも」


「…はは、僕でいいなら…もちろん」



弱々しくも笑ってくれて少し安心した
ドアを開け松本くんが廊下に出る

ドアを支えながら俺も少し廊下に出た



「あの…っ名前…、でいいです
後輩だし…これからも仲良くしてくださるなら…名前で呼んでください」



そんなことを言われたのは初めてだった

みんな大体苗字で呼び合うから
会社の人とはそれが普通だと思っていたせいで



「…じゃあ……ごめん
そういえば名前聞いてなかった」


「あ、すいません
潤って言います、″潤う″でじゅんです」


「っはー…かっこいい名前
名前までイケメンなんて妬けるなー」


「いやいや、櫻井さんは…確か、翔ですよね
そっちの方がかっこいいです」


「そう?」



キメ顔で聞き返したら笑われた
やっと元に戻ってくれた



「じゃあ俺も名前でいいよ」


「え、いや、それはダメですよ」


「なぁんで、櫻井より呼びやすいでしょ?」


「いや…そういう問題じゃ…」


「今日色々話せたし、途中ちょっと変な空気にもなったけど楽しかった

歳はちょっと離れてるけどさ…松本くんが言うように俺もこの先仲良くしていきたいから、ね?」



戸惑った顔をして悩んでいた

ホントは会社の人にも待田にも名前で呼んでもらって構わないんだ
名前の方が断然呼びやすいし

でも外部からお客様がくることもあるからみんな進んでは呼ばない

自分から呼んで呼んでーって言うのもおかしいし…

もしかしたら会社の人では松本くんが初めてかもしれない
あ、潤だったな


でもやはり先輩を名前で呼ぶというのはキツイみたいで、まだ悩んでいる



「じゃあ…2人でいる時とか飲みに行った時は名前で、どう?」


「あ、それなら…」


「よし、これからは翔でよろしく」


「え、いや…それはさすがに…せめて翔さんで」



大学の友人以来のその呼び方に
何とも言えないくすぐったさを感じて
痒くはないのに腕を少しポリっと掻いた



「くん付けとかでもいいよ」


「え″ぇ!?」



今日1番の驚き声に堪えきれず爆笑してしまう

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