テキストサイズ

トクベツ、な想い

第4章 4






情けない声を出して頭を掻き回した


みゆちゃんと元カノとは切り離した

俺が今好きなのはみゆちゃん

でも…



「翔くんなら大丈夫、うまくいく!
かっこいいから!翔くんイケメン!」



そう俺を励ますように、安心させてくれるように
潤に言われると勇気の出るまじないのようだった

思わず引き寄せ、抱き締める



「ありがとう、潤が言ってくれるとそんな気がしてくる…頑張ってみる」


「…は、はい…」



潤は腕の中で硬直していた
あ、と体を離す



「友情の…ハグ」


「…はは…」



お互いに笑いが引きつる

なんだこの空気…



「あ、じゃあ僕はこれで…」


「おぅ…また会社で、オムライスありがとう」


「いえ、どうなったか教えてくださいね」



分かったと頷くと軽く笑って潤が出ていった

もらったオムライスを持ってソファに座ると
まだ晩御飯には早いけど早速袋から出してパックを開き戴いた



「うお…うまっ…」



あっという間に完食してしまった

今日買った分は明日に回そう



「絶対今度行こ…てか俺のがここにいるの長いのに知らないって…
まぁここら辺は冒険とかもしないし」



独り言が炸裂する中、合間にしんと静まり返る部屋の虚しさに

いかん、と空のパックをゴミ袋に入れて再びパソコンと向き合った


元カノを引きずってる俺でもいいかな…

拭っても湧いてくる不安を抱えつつも
潤の言葉とハグを思い出して頑張ろうと思った










―1月25日、29回目の誕生日


朝から付き合いの古い友人達と母親からおめでとうメールが届いた


自分ではこの歳がめでたいとは思わないんだが
単純に、送られてきたメールに笑みがこぼれた

会社でも待田と誕生日を知ってる数人にちらちら言われ、その度にお礼を言った

もちろん潤にも言ってもらった










―定時になり、今日は残業を断って会社を出た

もうすでにみゆちゃんが会社から少し離れた所で待っていた



「ごめん、俺遅かった?」


「いえ、私も今来たとこです」


「一緒に出れば良かったのに」


「いえ、こんなとこ他の女の子に見られたら怒られちゃいますので」


「え?なんで?」


「…櫻井さん狙ってる人、多いんですよ?」



耳元でこそこそ言われた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ