トクベツ、な想い
第4章 4
いや、絶対俺の方が怒られるんだろうな…男性社員に
一緒に出なくて良かった…
さっきとは逆のことを今更思って安堵の息を吐いた
「…どうかしました?」
「あ、ううん…何でもない」
「じゃあ行きましょうか」
みゆちゃんとタクシーに乗り
うるさい心臓を落ち着かせながら余裕な表情を作った
着いた先はお洒落なフレンチレストランだった
俺なんて到底入れそうにない高そうな外観
ウェイターが奥の席へ案内してくれる
引かれるイスに頭を下げ座り、メニューを開いて渡された
なんか違う意味で緊張するんですけど…
確かにメールした時どこでも大丈夫とは言ったが…まさかこんなとこ連れて来られるとは…
みゆちゃんがシャンパンとコース料理を慣れたように注文している
それでいいか聞かれたが頷くしかなかった
てかこのメニュー値段書いてないんですけどぉー…
金…足りるのかな…
そう思っていると
「あの、今日は私がお金払いますので…」
「…そんなわけにいかないよ」
「いえ、私が誘ったので」
んー女の子に払わせるのはやっぱりよくないよな…
祝ってくれるのはありがたいんだけど
でも会計の時、どんだけ諭吉が飛んでいくのだろう…
折角お洒落なBGMがかかっているのに
俺の頭の中はムードも何もなかった
「安藤さんって、実はお嬢様?」
「え…なんでですか?」
「いや…値段書いてないレストランなんて普通みんな行かないだろうし
こんなとこ知ってるってことはって思って」
「あ…両親は、その…お金はあるみたいですけど…私は全然…」
お金持ちなんだ…初めて知ったな
そりゃこんなレストラン知ってるわ
なんかウェイターもみゆちゃんの顔見てすんなり通してくれたし
「失礼致します」
グラスとシャンパンを持ったウェイターがテーブルに来た
置いたシャンパングラスに液体が注がれていく
カンッとみゆちゃんと乾杯して飲むと
その舌触りと味にやはり高い酒は質が違うと思った
コースで来た料理も全てうまかった
ただ料理が来る度に使い分けるフォークとナイフ、スプーンに少し戸惑った
こうなるなら事前に調べておいたのに…
少しは知ってたけど、やる機会なんて数回しかなかった